ついにワンチェーンがイーサリアム・ブロックチェーンの架け橋に
JPモルガンでブロックチェーン・プログラムを率いていたアンバー・バルデット(現Clovyr社CEO)は、ブロックチェーン・プロトコルの隆盛について懸念を示している。「これらのブロックチェーン一つ一つが、別々の言葉を話しています」と彼女は4月に言った。
ブロックチェーンが異なると言語も違ってくるというのは、イオス、Tezos、ネオ、カルダノ、そして言うまでもなく現在も業界を代表する二つ、ビットコインとイーサリアムといったプロトコルが次々と出てくる現状では、頭の痛い問題だ。
しかしながら、増大しつつある相互運用性の問題も解決を迎えるかもしれない。
月曜日、北京とオースティンを拠点とする新興企業ワンチェーンがプロトコルのバージョン2.0のリリースを発表した。これによって、アトミックスワップ(第三者を介さずに仮想通貨の交換ができる仕組み)を通してワンチェーンのブロックチェーンとイーサリアムとの間で、分散型取引が可能となる。
この発表により、ワンチェーンは異なるブロックチェーン間の取引の実現可能性を示した最初のプロトコルの一つとなった。プロジェクトではブロックチェーン同士を繋げることに最大の焦点を当てており、ICOのような複合資産の使用事例を可能にしたり、増え続ける新興企業が最後の目標としている、より優れた分散型取引所の設立を目指している。
ワンチェーンは2017年のERC-20トークンの売り出し期間中、121,500ETH、約3,700万ドルを集めた。1月には、イーサリアムから独自のブロックチェーンへのトークン移動を行なった。
今のところ、ワンチェーンのソリューションではイーサ(イーサリアム・ネットワークの基軸通貨)のみをワンチェーンに移動したり戻したりできるが、発表によれば、いずれワンチェーンは「現存するほぼすべてのブロックチェーンをシームレスに統合できる」だろうとのことだ。
「我々の狙い通り、ワンチェーンがデジタル資産と金融業界を再編成するというのは、とても胸が高鳴ることです」同社の設立者でCEOのジャック・ルーは発表で語った。
どのような仕組みなのか
ブロックチェーン・プロトコルに他のブロックチェーンの言語を話すように教えることは、技術的に骨が折れることだとルーは認めている。「異なるブロックチェーンは異なるコンセンサス・アルゴリズムを持つ」のがその理由である。
しかしながら、これはまだ最初の試練に過ぎない。ビットコインはそのような画期的出来事をすでに経験している。すなわち、それは初めて分散型ソリューションを用いて「二重使用」問題を解決したからだ。端的に言うと、データは無限に複製可能なため、誰かにその口座でのビットコインの使用を止めさせ、再度使うのを防ぐにはどうすればいいのか、という問題だ。
ルーはコインデスクに語った。
一つのチェーンでは、二重使用の問題を解決するのはとても困難です。そして異なるチェーン間で二重使用の問題を解決しようとすると、それはさらに難しくなります。
ワンチェーンのソリューションでは、「storemen(管理者)」と呼ばれる特定のノード群が、「セキュア・マルチパーティー・コンピューテイション(安全な複数集団による計算)」という技術を用い、イーサリアム・ブロックチェーン上で一定額のイーサをロック(固定)します。
イーサが使用されることを防ぎつつ、例えば認知された秘密鍵のついたアドレスに送信するなどして、そのデータが破壊されるということもないのだ。
そしてそのイーサはワンチェーン上での「マッピングトークン」、WETHとして利用できるようになる。ユーザーがその資産をイーサリアムに戻したければ、WETHはバーン(通貨を使用できなくすること)され、元のイーサは、一定数のstoremenのノード群が秘密鍵を分割して提供するというしきい値分散法(情報管理の手法の一つ)を用いて、ロックが解除される。
この手法だと、対応するWTEHが存在する限りは、単一のノードがイーサを二重使用することはできない。
しかしワンチェーンだけが市場に存在するわけではない。NucoのAionプロジェクトもイーサリアムでの作業を開始し、6月にイーサトークンブリッジの「テストネット」バージョンを発表した。さらに多くのプロジェクトや新興企業が、例えばドージコインとイーサリアムのように、ばらばらのブロックチェーンを結び付けようとしている。
だが彼らはこの特定の使用事例に関しては、共同事業にも関心があるようだ。例えばワンチェーンとAionは異なるチェーン間のコミュニケーションを目的としたプロジェクトのIconと提携し、標準化を争うという混乱を避けるため、11月にブロックチェーン相互運用連合を結成しようとしている。
パブリックチェーン、プライベートチェーン、そして法定通貨
だが、ワンチェーンの目的は相互運用だけに留まらない。
このプロジェクトは新規仮想通貨公開(ICO)も視野に入れている。
ワンチェーン2.0の公開により、現在はワンチェーン上でWANトークンとイーサの両方でICOに参加することが可能となっている。
まもなく互換性のある通貨のリストに、ERC-20トークンのいくつかが加えられることになる。年末にはビットコインとの相互運用も計画されている。従来からクラウドセールで入手可能だったそれぞれのトークンは、所有しているトークンとの交換をためらう必要がなくなることから、潜在的な購入者にとっての使用事例となるだろう。
実際に、ワンチェーンは現在6件のICOプロジェクトを生み出そうとしている。
資金調達に加えて、同社は分散型取引所を含む潜在的な使用事例として、医療情報のシームレスな移動や、クレジットおよび貸付業務などを検討している。
ルーがコインデスクとの最近のインタビューで語ったところによると、最終的には、「パブリックチェーン同士だけでなく、法定通貨同様にプライベートチェーン同士もつなげたいと考えています」とのことだ。
ワンチェーンの異なるチェーン間でのコミュニケーションは「包括的なソリューション」なので、彼曰く、他のブロックチェーンと同じように、それは中央銀行発行の仮想通貨との接続も可能だという。近い将来、ブロックチェーンベースの法定通貨が現れることに彼は「自信」を抱いており、こう付け加えた:
やがて法定通貨が仮想通貨経済に流れ込んでくるでしょう。
Wanchain's Bridge to the Ethereum Blockchain Is Now Open – CoinDesk