ベネズエラに数百万のビットコインを送りたい
開発者のジョナサン・ホイーラーが手詰まりに陥っている。
元銀行員の開発者は彼の新しいプロジェクトについて多くを語りたがらないが、世界で最も劣悪な通貨体制の下で暮らす人々を、すぐにでも救いたいと考えている。
だからこそ、彼のミッションには多くの支援が必要なのだ。大量のモバイル機器によるエアドロップによって、ベネズエラ市民の手にビットコインを届けるというミッションに。
問題は、国の諜報活動が活発になりすぎて、彼と共に働いている人々が危険にさらされているということだ。
ベネズエラ政府は自らの方針にそぐわない人々を常に逮捕しており、政府の検閲から逃れるために利用されてきた技術を禁止するところまで来ている。そして言うまでもなく、ベネズエラ政府が独自の仮想通貨ペトロを導入していることは、国の経済復興に欠かせないものだ。
それでもホイーラーは、政治を変えることで国を救うという考えにこだわるつもりはない。その代わりに、彼は生活必需品の支払いにさえ困窮しているような人々がいる経済危機(実際、食料の供給量が少なく、大半の人々の体重が減り続けている)を、ビットコインによって乗り越えたいと考えている。
そしてこのプロジェクトはメディアが描くような誇大妄想などではなく、いくつかの芽を出しつつあるということを広めたがっている。プロジェクトはアズールと呼ばれるモバイルアプリ開発のチームを支援しており、彼の希望的観測だが、年内に数百万ドルの寄付を募ることができると考えている。
ホイーラーはコインデスクに語った:
成功の可能性を最大限に高めるためには、プロジェクトを大規模に行なわなければなりません。財政的に苦しんでいる人々を、この大がかりな共同ミッションで救いたいと思っています。
それが大胆な(場合によってはクレイジーな)考えだと認めているが、彼は2月にゴールドマン・サックスを退社するという決断を下していた。
その後、彼はモーガン・クレナと協力し、NPOのペイル・ブルー基金を設立した。ホイーラーにとっては個人的なヒーローで、宇宙から見れば地球のすべてがどれほど些細なものに感じられるかということについて有名な推薦文を書いた、天文学者カール・サガン(1990年に宇宙から地球を見た写真を題材に「Pale Blue Dot」という著作を発表している)にとっては、驚きの名前だっただろう。
「私にとって、それは人々が互いに思いやりを持ち、我々の唯一の故郷である淡いブルーの点(pale blue dot)を大切にしなくてならないという責任をはっきりと示しています」サガンは1990年の有名なスピーチで述べている。
その信念を元に、彼らはそれを自らの手で行なうことにした。
「社会から少し距離を置いて、自分ができることを見極めましょう」クレナは言う。
使いやすさの問題
数か月後、プロジェクトはベネズエラ市民を含めて15人体制となっている。
現在、Zキャッシュやダッシュを始めとした仮想通貨コミュニティがベネズエラを支援し続けてきた。しかしこれまでのところ、その努力はあまり報われていない。
だがホイーラーとクレナは、これが使いやすさを追求してこなかったからだと指摘している。ペイル・ブルー基金はその目標達成に向けて、オープンバザール(仮想通貨のフリマプラットフォーム運営企業)やローカルビットコイン(P2Pのビットコイン販売プラットフォーム運営企業)などのビットコイン関連会社と議論を重ねている。
そしてブロックチェーン業界をすべて考慮に入れた上で、彼らはほとんどの取引に利用され、一番能力が高いと思われるビットコインを選択した。
「我々はビットコインに焦点を当てています。最も世界で通用すると思われる、最適の解決策でしょう」ホイーラーは言う。
「ビットコインは一杯のタンクのように作られています」クレナは主張する。
二人にとって、ビットコインがライトニングネットワーク、すなわち取引の一部をオフチェーンで行ない仮想通貨のスケーリング問題を解決しよとしているレイヤー2テクノロジーを備えているというのは、今や紛れもない事実だ。
現在は試験的に導入されているライトニングネットワークは、アズールアプリの技術設計の鍵を握っているとホイーラーは語る。
その目標に向けてペイル・ブルー基金は、独自のライトニング関連設備を開発しているライトニング・ウォレットのコインクリップや新興のACINQといった企業とも、話し合いを進めている。
さらに同基金には、最近ジミー・ソンの集中プログラミング・ブロックチェーン・ワークショップを履修したクウェンティン・ビダルを含む、成長著しいコード開発者も多数参加している。支援者達曰く、資源の限られたベネズエラ人は高度に洗練された、あるいは大容量ソフトウェアを運用できるデバイスを持っていないことから、これはとても重要なことなのだという。
ホイーラーは述べた:
いわゆる流行の携帯電話を持っていない人々こそ、ビットコインが必要なのです。
さらにペイル・ブルー基金のベネズエラ人とブレインストーミングを行なうことでホイーラーが理解したのは、この国にビットコインを導入した場合の欠点の一つが、その使い方がとても難しいというものだった。それを踏まえた上で、チームはアズールの開発に専念している。
「人々には週末にビットコインの使い方を学べるような暇などないのです」ホイーラーは言った。
ビットコインを購入する
だが彼らが研究すべきことはまだ残っている。
ホイーラーとクレナはNPOのヒューマン・ライツ基金と国連とも提携を結ぶ予定だ。加えて、経済危機にある国で新たな仮想通貨をばらまいた場合の予期せぬ結果を考えるため、経済学者とも議論を進めている。
こうしたつながりを持った上で、彼らはアプリを開発し、その概念を実証しようと奮闘しているのだ。
そしてその後は、ベネズエラ人にエアドロップできるようなビットコイン購入のための資金をどう手に入れるかにかかってくる。
2月に開催されたBitDevの会合で、ホイーラーは当初ベンチャーキャピタルから数百万ドルを集めるという目標を掲げた。しかし彼とクレナが投資家にそれを売り込んだところ、新規仮想通貨公開(ICO)を通して独自の仮想通貨を発行すべきだという声が上がったのだ。
ホイーラーによると、仮想通貨市場は現在とても盛り上がっているので、チームはより多くの資金を集められるだろうとベンチャーキャピタルが主張したというのだ。
だがホイーラーとクレナはそのアイデアを切り捨てることにした。
現段階において、彼らはいつかベネズエラを越えて、人権が危機に曝されている他の国も支援するという理念を掲げて、寄付を募っている。
だが最初はベネズエラに集中するということに関して、ホイーラーは結論付けた:
我々はどこかで始めなければなりません。
A Plan to Send Millions in Bitcoin to Venezuela Is Moving Ahead – CoinDesk