王室が支援するICOは5億7,500万ドル。冗談じゃない、現実だ。
仮想通貨はランボルギーニがお好みらしい。
それというのも事前発表では、この自動車会社創立者とフェラーリ社創立者との確執を描いた伝記映画を含む映画製作予定の新興企業が、投資会社のブロックタワー・キャピタルとさらに一人の王子を始めとする投資家から、仮想通貨TTUの個人向けセールで5億7,500万ドルを調達したのだ。
それによって、TaTaTuと呼ばれる新興企業はこれまでの新規仮想通貨公開(ICO)において第三の調達額を集め、コインデスクのICOトラッカーのデータのよると、これに勝るのはイオスとテレグラムだけだという。
仮想通貨業界で何の経験もない企業TaTaTuが、これほどの資金を集めたことが冗談だと感じるのは、何もあなた一人だけではない。
このプロジェクトを支援している者でさえ、今日発表されたニュースが多くの人々の意表を突くだろうと考えている。
この巨大投資は、通貨が乱発されて値下がり気味の仮想通貨業界では驚きをもって迎えられたでしょう。
投資家は典型的に法定通貨ではなく、仮想通貨で参加していますから。実際にはそうではないでしょうが。
Lvna CapitalのCEOアラン・カシスはコインデスクに語った。カシスの家族はこのプロジェクトに資金を投入しているが、Lvna Capital自体はこの投資に参加していない。
仮想通貨に興味を抱く支援者が新たに広がったことに関して、彼は続けた。
これは我々がビットコインへの参加を期待されていた機関投資家を待ち続け、ようやく市場に入ってきた新しい資金なのです。
確かにその新しい資金の一部の出どころは、ヨーロッパの王族並びに貴族だ。
ルクセンブルクの大公位継承順位二位のフェリックス王子、そして有名な酒造会社バカルディを所有している一家のレディ・モニカ・バカルディである。(現時点でコインデスクはフェリックス王子の投資を確認していないが、レディ・バカルディからの支援が1億ドルと「推定される」ことを、TaTaTuはメディア向けブログで明らかにしている)
その上、ブロックタワー・キャピタルが投資し、Lvna Capitalが戦略アドバイザーとして関与しているとなると、TaTaTuの事業に対しては支援が大きすぎる。つまり、映画製作には留まらないということだ。
独自のビデオコンテンツを制作することに加えて、TaTaTuはトークンを資金ベースとしてビデオ・オン・デマンドのプラットフォームを作成し、ネットフリックスに対抗しようとしている。
プレスリリースによると、調達した資金はプラットフォームを作成し、視聴者を集め、彼らと収入を分配できるような広告支援サービスを促進するのに使われる予定だという。
TaTaTuのCEOアンドレア・レルヴォリーノはプレスリリースで語った:
反響に対してはさらなる検証が必要ですが、プラットフォーム上でコンテンツを視聴するためのTTUトークンを利用者に配布しつつ、コンテンツを入手・作成するという我々のモデルは、すべての人の利益につながるでしょう。
しかし、観客がこの投資への参加を踏みとどまる理由も数多く存在している。
初心者にとって、巨大な投資事業は安心よりも猜疑心をもたらすものだ。さらにセレブが宣伝するようなプロジェクトはこれまで何度も失敗してきた。
加えて、ウェブサイト、ホワイトペーパー、そしてプレスリリースでのスペルミスといった些細なことが、疑念をさらに掻き立てる。(スペルミスは一般的に詐欺の証拠である)
しかし業界の慣習から最も型破りなのは、このホワイトペーパーにはTaTaTuのためにどれほどのトークンが発行され、あるいは今後さらに増えるのかどうかが記載されていないということだ。
その代わりにホワイトペーパーには、このプロジェクトに関するイーサリアム・ベースのトークンの57%は、個人向けセールのために保管されていることのみが記されている。それに変更がなければ、トークン供給量は10億ドル強といったところだろう。
ブロックタワー・キャピタルのアリ・ポールからの返答はないものの、下記の発言をしたことは認めている。
全世界で保有されている0.5%弱の仮想通貨を、このプロジェクトによって超えられることに興奮しています。
TTUエコノミー
すべての利用者に仮想通貨を配布ために、TaTaTuはコンテンツの視聴者と制作者とで収益を分配することを計画している。
大まかに言って、TaTaTuの基本的な考えは単純だ:そのサービスを通じてコンテンツを見た視聴者は、労力を提供した製作者と共に、TaTaTuの広告収入を分かち合う。
そしてホワイトペーパーによれば、広告主からの収益はネイティブトークンで支払われ、コンテンツを視聴したことによる報酬もTTUで与えられる。これはアドバタイジング・ビデオ・オン・デマンド(AVOD)と呼ばれている。
しかしホワイトペーパーの後半では、グーグルが抱えるモバイル広告企業AdMobが、「より良い現金化の手段」であり「TaTaTuを法定通貨で支払ってくれる」という理由で、この仕組みが曖昧になっている。
ホワイトペーパーはさらに続き、この仕組みにもかかわらず、第三者の広告会社からの資金はこのプラットフォームのトークンに転換され、その後の数週間で(身元を確認した)視聴者とコンテンツ提供者との間で分配されるという。
多くのICOの発行主がすべての収益を利用者に還元することを誓いつつ、トークンの採用が増えることによって会社の資産価値が増大した場合はそれを留保している。
TaTaTuもそのようにして資金を稼ぐ予定だ。ホワイトペーパーでは、売られていないトークン(35.5%)は留保され、市場の安定化に利用されるが、他の5%はチームとアドバイザーに、2.5%は設立者のために保管されているという。
そしてそれだけならさして複雑にはならないのだが、いったんビデオ・オン・デマンド・サービスが軌道に乗り始めると、ややこしくなってくるのだ。
最後にホワイトペーパーは他の主なウェブサイト同様、セレブのプロフィールやブロックチェーン・ベースのデジタル著作権管理、ピアツーピア方式の利点、そして利用者制作のビデオなどの追加機能があることを掲載している。
スポーツのストリーミング放送のように、他の種類のビデオ・コンテンツもあるという。ホワイトペーパーによると、これらの追加機能はこれから2019年3月までには完成するらしい。
利用者の準備は?
これは野心的な計画だが、プレスリリースによれば、投資家だけでなく未来の利用者からも大きな注目を集めているという。
6月15日にリリースされたアルファ版のプラットフォームの利用者は500人だったが、新しいプラットフォームの順番待ちリストには200,000人の氏名が並んでいると、プレスリリースは伝えている。
初期の利用者はプラットフォーム上で試験運用と交流を通してトークンを稼ぐだろう。そしてSteemit(報酬としてトークンを入手できる記事投稿サービス)のようなコンテンツ型プラットフォーム同様に、予定されている新たなプロトコルが機能したとしても、初期に参加した者は最大の報酬を得られる傾向にある。
とは言うものの、このプロジェクトは技術よりもコンテンツを重視しているように思われる。ホワイトペーパーによると、調達資金のわずか15%がソフトウェアを含む開発費として使用されるという。一方、35%が利用者獲得に、そしてさらに35%がコンテンツ獲得に使われる。最後に残った15%がマーケティングの費用だ。
実のところ、ランボルギーニ社だけがこのサービスの対象となっているわけではない。俳優ジェレミー・レナーが音楽を担当している公開予定のドキュメンタリー・アニメーション映画「アークティック・ジャスティス:サンダー分隊」も、TaTaTuが宣伝している映画の一つだ。
以前、レルヴォリーノの映画を支援したことに関し、バカルディはプレスリリースで述べた:
アンドレアは常に高いビジネス・スタンダードを維持し、時にそれを乗り越えられる、先進的な考えの持ち主です。
しかし、TaTaTuが映画配信に参入するに当たっては、ブロックチェーン業界での様々な競争に直面するだろう。この業界には多くのプロジェクトが違った側面から参入しているからだ。直接的な最大の競争相手はFlixxoだが、YouNowやVideoCoinも待ち構えている。
そうは言っても、この使用例を実現し、あるいはそれを超えることがあろうとも、報じられているTaTaTuの資金調達は他のすべての事業を合わせたものよりも巨大なものである。
スタン・ヒギンズの寄稿より。
This $575 Million ICO With Royal Backing Is So Crazy, It Might Be Real – CoinDesk