コラム:コードは支配権を持つ。しかしブロックチェーンを支配するのはコードだけではない。

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ブロックチェーンネットワークは信頼できない様々な当事者が関与する複雑なシステムだ。ブロックチェーンのプロトコルは各当事者が協力することで報酬が得られるように設計されており、背信行為の代償は得られる利益よりも大きい。

それでも他の複雑なシステムと同じようにブロックチェーンは様々な要素で構成されており、その相互作用を予測することは難しい。そのためブロックチェーンシステムを支配したり規制したりすることは困難だ。

独立した各部分の動きを規制することはできるかもしれない。しかし、全体は部分の総和に勝る、と言われているように、全体を構成する様々な要素やその要素間に存在する力関係を正しく理解することなくして支配を実現することはできない

この記事ではブロックチェーンに基づいたシステムに及ぼす複数の支配層の概要を説明する。

ここでは、インフラによるオンチェーン支配とインフラを支配するオフチェーン支配の2つの支配層を区別している。各モデルは内因的要素と外因的要素を包含し、両要素はブロックチェーンに基づいたネットワークの全体的な支配構造に多少なりとも関係する。

支配の層

ブロックチェーンの支配について解説する一連のシリーズの最初の投稿を見てみると、もっとも分散化されたブロックチェーンベースのアプリケーションは相互作用する異なる層に支配されることが分かる。

  1. インターネットプロトコル層:例.TCP/IPプロトコル
  2. ブロックチェーン層:例.イーサリアムプロトコル
  3. 分散アプリケーション(DApp)フレームワーク:例.DAOstack
  4. DApp層:例.Sapien

各層は独自の支配構造を実装するが、他の層と影響を与え合う可能性がある。これらの複数の層の設計と実装にはいくつかの個人が含まれるが、おそらく彼らは異なるコミュニティに属するだろう。彼らが互いにコミュニケーションを取り合っているかどうかは不明だ。

具体的に言うと、下位層のコミュニティは上位層が実装したガバナンスシステムをほとんどまたはまったく考慮せずに、独自の支配構造を実装することがよくある。そうすることで彼らは最終的に上位層のアプリケーションがどのように動作するかを決定づけている。

例えば私が関わっているDAOstackはイーサリアムブロックチェーン上に構築されたDAppフレームワーク(レイヤー3)だ。そのためDAOstackはブロックチェーンベースの特定のネットワークの統治ルールに従う。

しかしDAOstackもまた、人々がどのようにプラットフォームと相互作用し、プラットフォームの上にどのように新たな分散化された組織を作るかを決定付ける独自のプロトコルを実装している。逆に、DAOstackの上に展開された(Sapienのような)アプリケーションはこのDApp(レイヤー4)に特有な独自の支配プロトコルを備えている。

その結果、ブロックチェーンベースのアプリケーションは最初それ自身の支配ルールに従うが、間接的にはアプリケーションが稼働するプラットフォームのルールにも従うことになる。そのプラットフォームとは、関連するスマートコントラクトの適切な実行を保証するイーサリアムブロックチェーン(レイヤー2)とすべてが実行されるインターネット(レイヤー1)だ。

各レイヤーの支配は2つの独立した要素に区別できる

  • インフラによる支配
  • インフラの支配

これら2つのメカニズムはおおむね平和的に共存している。両者は独自のルールに従って、時には一致しないこともあるが、特定のプラットフォームあるいはインフラを規制することに貢献している。

これら2つのメカニズムは、分析の着目点によって、特定のコミュニティに内因する、あるいは外因すると考えられる。

内因的なルールはコミュニティによりコミュニティのために入念に作られている。このようなルールは自らに課したルール(例:ヒップスターの服装規定)を通じて自己統治しようというコミュニティの試みだ。

外因的なルールはコミュニティの外部にある第三者が確立し課すものだが、それでもコミュニティメンバーが順守する必要があるルール(例:学校の制服)を通じてコミュニティに影響力を持つ。

支配のモード

インフラによる支配とは技術的プラットフォームに埋め込まれたルールのことだ。このような支配は一般的にルールの策定よりもルールの実施の過程に重点を置いている(少なくとも初期のルールの作成については)。

例えばイーサリアムの場合、内因的なルールとはブロックチェーンプロトコルと合意アルゴリズム(レイヤー2)のことを指している。DAppの観点からは内因的なルールには意思決定の手順と技術的なルールが関連するスマートコントラクト(レイヤー3と4)に含まれる。

他にも様々な外因的なルールが存在する。例えばTCP/IPなどのインターネット関連プロトコルでは、人々がブロックチェーンベースのネットワーク(レイヤー1)に接続できるようになっている。

これらのルールがブロックチェーンベースのネットワークの外部に起因する場合、インフラによる支配を「オンチェーン」支配と呼ぶ。このようなルールはブロックチェーンベースのネットワークに直接符号化され、セキュアで分散化された方法で実行される。

オンチェーンの支配ルールは自己修復する手順も特定することがある。それはちょうど基準を作り、修正し、廃止する方法を規定する基準を作ることができるのと同じように、他のプロトコルルールを作り、修正し、廃止する手順を定義するプロトコルルールを設計できる。

例としてTezosを考えよう。Tezosは自己修復するブロックチェーンで、プロトコルルールは修正できる。つまりルールを変更するルールを含んでいることになる。

インフラの支配は技術的プラットフォームの外部に存在するすべての力に及ぶが、それでもなおインフラの開発と運用に影響を与えている。このようなルールは技術的レベルよりもむしろ社会的あるいは組織的レベルで影響を及ぼしている。

内因的ルールは、規則、社会規範、習慣、コミュニティ内で調整する目的で特定のコミュニティが開発あるいは支持する支配構造で構成される。

例えばオープンソースコミュニティの開発者は、オープンソースソフトウェアプロジェクトを開発し展開するため、規則や手順を体系化する。ピアレビューではよくこのような規則が施行されるが、コミュニティは施行と監視の形式化されたメカニズムを実装することもある。

これらの規則に従わなければ、コミュニティから排除されるなどの社会的制裁を受ける可能性がある。

ブロックチェーンベースのネットワークではインフラの支配を「オフチェーン」支配と呼ぶことがある。その理由は支配ルールが存在しブロックチェーンインフラの外部に影響を及ぼすからだ。オンチェーン支配ルールと異なり、オフチェーン支配ルールは自動的に施行されるわけではない。施行と監視には第三者の権威が必要だ。

ほとんどのブロックチェーンコミュニティでは、どの変更点をプロトコルに実装するかを決定するすべての規則や手順を内因的ルールに含んでおり、フォークする決定もその中に含まれる。

ビットコインではそのような決定はビットコイン改良提案(Bitcoin Improvement Proposals:BIP)で行われる。これはビットコインプロトコルに新たな機能た改良を提案できる非公式のメカニズムだ。

イーサリアムではイーサリアム改良提案(Ethereum Improvement Proposals:EIP)を提案する同様のシステムを実施した。これはイーサリアムプロトコルやコードへの変更を提案したり要求したりできる非公式な手順だ。しかし、これらの手順はどれも拘束力を持たない。開発者コミュニティでは提案内容と影響を評価しコードベースに実装すべきかどうかを決定する。

これらの提案が受け入れられコードに実装される範囲では、インフラの支配はインフラによる支配に影響を与える能力を持つ。言い換えると、オフチェーンの支配は一般に基本的なブロックチェーンプロトコルのルールを変更することを狙っているので、オンチェーンの支配構造を修正する力を持つ。

外因的ルールはコミュニティから発生するものでもなくコミュニティが選ぶものでもないが、それでもコミュニティの活動に影響を与える力がある。

例えば、国の法律はブロックチェーンベースのネットワークに直接適用できるものではないが、ネットワークの運用に影響を与える可能性がある。もちろん、法律は地域的なものなので、法律を破ったとしても、特定の区域内での司法制度で取締りを受けるだけだ。しかし、(純粋なデジタル資産とは対照的に)現実世界の資産を扱い始めるとすぐに、法の規則が関与し始め、コードの規則に対抗する可能性がある。

内因的ルールと外因的ルールの間の緊張関係をもっとも明確に表しているのは、最近発見されたのだが、ビットコインのブロックチェーンに児童ポルノ画像やリンクが隠されていたことだ。このようなコンテンツを隠し持つことは違法で、国内法ではこのように有害なコンテンツは削除すべきだと定められている。

しかしビットコインの内因的ルールによるとブロックチェーンは変更不可能だ。ブロックチェーン上に記録されたコンテンツをノードが任意に削除したり修正したりすることはできない。

同様の緊張関係はブロックチェーンの変更不可能性とヨーロッパでの忘れられる権利との間にも存在する。忘れられる権利とは人々が自分に関する情報が不適切だったり古かったり不適切だと判断すると、そのような情報の削除を要求できる権利のことだ。

政府などの規制当局はこのような外因的ルールを課すことで社会的秩序と公衆道徳を守ろうとしている。その目的は特定のコミュニティや一般国民の利益を促進することだ。そのことで時には他のコミュニティの利益や規範が犠牲になることもある。

まとめ

今日、オンチェーン支配とオフチェーン支配についての議論はそのほとんどが内因的ルールに注目したものだ。しかし、ブロックチェーンベースのプラットフォームの運用の仕方を最終的に決めるのは、内因的ルールと外因的ルールの組み合わせだ。

ブロックチェーンの支配を理解し始める前に、経済圏的なアプローチを取り、ブロックチェーンベースのプラットフォームの運用に影響を与える可能性のある様々な力と、それらが互いにどのように関連し合っているのかについて考える必要がある。

その結果、内因的ルールだけに注目し外因的ルールを無視することはできない。これは、人々をその置かれている社会的状況と独立に理解しようとしたり、肉体を見ずに細胞を分析しようとしたり、全体を無視して部分だけを見ようとすることと同じことだ。

Code Is Law – But It’s Not the Only Law for Blockchains