一年ほど前、コンセンサス2017のカンファレンスで私は偶然、ブロックチェーンが専門の弁護士Marco Santori氏に出会ったが、彼は興味深い見解を聞かせてくれた。
当時ブロックチェーンの業界は過渡期にあった。2015年と2016年に行われた「blockchain not bitcoin」の講演は古くなり、暗号通貨はICOブームの影響もあって猛烈な勢いで戻ってきていた。そのため、ニューヨークに集まった2,700人の参加者は企業内ブロックチェーンと暗号通貨業界の当時の様子をよく表していた。
しかしSantori氏はどちら側の参加者もあまりお互いに話したり交流したりしていなかった、と述べた。この2つのグループは本質的に別々の業界になってしまっていたのだ。
そうなるのも当然だ。過去にダーク・マーケットなどの反道徳的なビジネスに関わっていたことを考えると、規制された金融機関に代表される企業はビットコインなどの暗号通貨を恐れ関与したくないと思っていた。
暗号通貨の支持者は、彼らにとって刺激となったと考えている「blockchain 2.0」の関係者がビットコインに対して見下すような態度を取ることを苦々しく思っていただろう。
ブロックチェーン技術が世界を良い方向に変えてくれると信じるアーリーアダプターは、企業集団の比較的平凡な目標(例えば、銀行管理業務効率化)にがっかりし、「非公開ブロックチェーン」が役に立つのかどうか疑いの念を持っていた。
そのため分岐することは避けられないことだったのだろう。しかし私は来月開かれるコンセンサス2018では、異なる分野の間での交流が行われるかもしれないと思っている。
さまざまなSatoshi?
先週CoinDeskで取り上げた話題を見てみよう。
最初に、エネルギー業界大手のBPの重役はICOを実施した企業と協業し、いつか公開ブロックチェーンを利用することも検討するかもしれない、と述べた。
その翌日、保険業界大手アリアンツの重役がCoinDeskのIan Allisonに対し、世界中に展開する子会社間で資金移動するために開発中のインターナルトークンについて語った。
確かにそのプロジェクトではAdJoint社という名のスタートアップ企業が開発した商用ブロックチェーンを利用している。それでもトークンは持っているので、「通貨には頓着しない、その技術だけに興味がある」という昔の諺にぴったり一致しているわけではない。
さらにその重役は、いつか従来の銀行システムへの依存を減らし、わずかにビットコイン風にしたいという願望がある、とざっくばらんに語った。
来るべき収束に向かう他の兆候もある。
今月初めにCoinDeskがレポートしたように、企業向けブロックチェーン共同体Hyperledgerは開発したコードをICOプロジェクトに公開し始めた。
分散化認証システムを開発しているHyperledgerメンバーのSovrin財団は今年の夏に、同共同体が開発したコードを利用した暗号通貨を立ち上げる最初の団体となる予定だ。
奇妙な混ぜ合わせ
公開ブロックチェーンと非公開ブロックチェーンがもっとも奇妙に混ぜ合わさったものはおそらくHedera Hashgraphだろう。3月に公開されたHedera Hashgraphは暗号通貨を持つ公開ネットワークだ(コンセンサスアルゴリズムのHashgraphはブロックチェーンとは異なるものだが)。
しかしビットコインやQuorum、Hyperledger、zcash、R3’s Cordaと異なり、Hashgraphはオープンソースではない。Hashgraphは開発元のソフトウェア企業Swirlds社が特許を取得している。
開発者によると、Hashgraphの利点はHedera公開ネットワークにはフォークに対する抵抗性があることだ。もし誰かが複製しようとするとHedera Hashgraphの管理主体は告訴する、と約束している。
それでもそのコードは公開レビューでき、開発者はネットワーク上で動作するアプリケーションをライセンスなしで自由に開発でき、希望すれば誰でもノードを構築できる。そのため、ある程度までは許可は不要だ。
会社名とゲート型台帳のコンセプトが同名のR3は、公開される方向へと進んでいる。Corda platformに向けて広がった同共同体のビジョンは、銀行だけでなく世界中の様々なビジネス(航空会社、ホテル、旅行代理店)を結びつけることが期待されている。
AdJoint社のRichard Brown CTOはその目標を「非公開で安全で許可が必要な、開かれた共有ネットワーク」と表現している。しぶとい分散主義者らはばかにするだろうが、ウォール街に狙いを絞った2015年のR3よりも野心的に思える。
公開ブロックチェーンと非公開ブロックチェーンの2つの世界が十分に融合したと言うにはまだ早い。
しかし公開ブロックチェーンの実現に向けて企業がひそかに進んでいることは、開かれた世界的な金融ネットワークは分断されたネットワークよりも便利だという考えを支持するものになるだろう。
これはまさに、1990年代に流行ったイントラネットよりもインターネットの方がより価値のあるものを作れたことと同じことだ。
いずれにしても、来月開かれるコンセンサス2018にあなたがスーツ姿で参加してパーカーをまとった奴と会話が始まったとしても、あるいはその逆だったとしても、驚かないように。
互いに何か学ぶことがあるかもしれないのだから。
The Public-Private Blockchain Singularity May Be Close At Hand