発行量に上限があるビットコインがさらに一歩上限に近づいた。
不慮の事態が起きなければ1700万ビットコインが今後数日間のうちに採掘されることになる。これは世界初の暗号通貨のもう一つのマイルストーンとなる。その理由は、ビットコインの現在の規則により供給できるのは2100万ビットコインに制限されているからだ。
一歩離れて見ると、2016年中盤以降初めて100万ビットコインを超えたというマイルストーンは、テクノロジーのコアとなるコンピューター科学が達成したこと、つまり共用ソフトウェアが作成し可能にするデジタル貨幣の希少性のもう一つのリマインダーとして特筆すべきことだろう。
手短に言えば、新興の暗号通貨が模倣し適応させてきたビットコインのコードでは、決まった数のビットコインだけが新たに供給されるようになっている。マイナーやビットコイン取引の承認処理に必要なハードウェアのオペレーターは、公式の履歴に新たなブロックを追加するたびにこの貴重な通貨を報酬として受け取る。
それでもこの過程には多くの変動要素がある。
注目すべきことに、1700万番目のビットコインをいつ誰が採掘するのかは正確に予測することはできない。これは共通のソフトウェアを協調させておく際に作られる多くの細かな違いによるものだ。
とはいえ、推測することはできる。ビットコインの各ブロックは12.5ビットコインを生成し、ビットコインブロックを1つ作るのに大体10分かかるので、一日で新たに作られるビットコインの数は約1800となる。
そのため、このイベントを「心理的障壁」と見るのがおそらく一番いい、とTetras Capital社の設立パートナー、Alex Sunnarborg氏はCoinDeskに語っている。コミュニティが変われば解釈も変わるものだ。
例えばSunnarborg氏は、ビットコインの全供給量の80%が生成済みだということに対して別の解釈を試みようとしている。つまりまだ採掘されずに残っているのは全供給量の約5分の1だけ、ということだ。
このマイルストーンをテクノロジーとその成果だと認識すべきときだと考える者もいる。
「すごいことになると思います」2014年にアメリカ政府から数百万ものビットコインを購入したベンチャーキャピタリスト、Tim Draper氏は次のマイルストーンのことをこのように語った。
彼はCoinDeskに次のように述べている。
「ビットコインの創設者はビットコインがこれほどまでに重要なものになるとは夢にも思わなかったでしょう」
話術の才能
このマイルストーンはビットコインの機能、そしてさらに広く暗号通貨の機能を学ぶ機会とすべきだ、と考える者もいる。
例えば、ビットコインのマイニングソフトウェアを実行するコンピューターのオペレーターが変更を加えようとしない限り(今はおそらくありえないシナリオだが)、ビットコインの供給量をさらに増やす方法は存在しない。この成果、技術的な現実性がビットコインと、資金、経済、そして他の貴重な通貨資産との関連において重要な役割を果たしている。
このようにして、初期の頃にビットコインに投資したオーストリア経済の金の投資家や読者は、この機能の価値をすぐに理解し、おそらく「暗号通貨」という言葉そのものを生み出した。
このグループの中でもっとも主張しているメンバーの1人、Trace Meyer氏は最近のツイートの中で根底にある価値観を要約しているが、その中で政府は将来的にユーザーがビットコインを保有しないようにするかもしれない、と主張している。
「マネーサプライを増加することはインフレを通じて没収する手段で、代表者や法の手続きなしで課税するようなものです」
彼はこのようにツィートしている。
「マイニング(採掘)」と呼ばれる新たなビットコインを作り出す方法は、金を採掘することのアナロジーだ。
ビットコインは中央銀行が発行するのではなく、ブロックチェーンを維持する作業を通じてネットワークが作り出す。最近行われた取引についてマイナーが正しいハッシュ値を発見する、つまりビットコインプロトコルのパズルを解くと、「採掘報酬」として発見者の口座にビットコインが入金される。
これにより総供給量からわずかな量のビットコインが生成され差し引かれることになる。
ビットコインの供給曲線
マイナーが得てきた報酬は当然ながら時と共に変化してきた。
ビットコインの創設者Satoshi Nakamoto氏が2009年1月3日に初めてビットコインのブロックを採掘したとき、最初の50ビットコインが生成された。この報酬額はさらに209,999ブロックが承認されるまで続いたが、そこで初めて「半減」、つまり報酬の削減が行われた。
報酬の半減自体は驚くことではなかった。ハードコーディングされた予定に従って、ビットコインネットワークは210,000ブロックごとにブロック承認の報酬を50%に減らす。もっとも最近、2016年7月に実施された半減では、報酬額は12.5ビットコインとなった。
このことは、採掘されずに残っているのは400万ビットコインだけであるものの、ビットコインネットワークはビットコインが始まってからこれまでの9年間程度では今後採掘し尽されることがない、ということを意味する。半減した報酬がさらに半減すると、資金供給のインフレ率、つまり供給量の増加は遅くなる。
Redditのサブフォーラムr/bitcoinの匿名のモデレーター、BashCo氏はビットコインの供給済み総量(青色の曲線)とビットコイン供給のインフレ率(オレンジ色の曲線)をプロットしている。
提供元:BashCo
ビットコインプロトコルが同じまま(新たなブロックチェーンは平均10分ごとに採掘され、半減のスケジュールと総供給量は変わらない)と仮定すると、最後のビットコインが採掘されるのは2140年5月ということになる。
次の120年
このことを念頭に置くと、この図はマイルストーンを認識する際の共通の話題、つまりビットコインは非常に長い間続くようにプログラムされている、ということをうかがわせるものとなっている。
ウォレットプロバイダーのCasa社に勤める主任インフラエンジニア、Jameson Lopp氏はCoinDeskに対し、ビットコインは分割可能で、ビットコインの最小単位は一見無限に小さい値を取れることを指摘した。
彼は次のように述べている。
「1700万BTCは莫大な数のように聞こえますが、とても少ない量です。現存する億万長者の一人ひとりに1ビットコインを丸々割り当てるには足りない量なのです。
幸い1ビットコインは1億satoshiに分割できるので、この先も常に十分な量が供給されます!」
しかしソフトウェアにも同様に別の予測できない出来事がある。
一例として、ビットコインはプロトコルを変更しない限り、供給量が2100万単位に到達することは決してない。全供給量は少なくとも1satoshiだけ少ないのだ。その理由は、2011年5月17日に、「midnightmagic」という名のマイナーが、理由は不明だが、ぴったりの50ブロックの報酬ではなく49.99999999ブロックの報酬を要求したからだ。
さらに誤解の無いように言っておくと、ビットコインは2100万ビットコインが生成された後でも運用が止まるわけではない。その時点でマイナーは純粋にすでに収集済みの手数料の形で報酬を受けることになるだろう(もっともそのような市場が実際のところ機能するのかどうか考えようとしている科学者もいる)。
とても多くの疑問点が回答されないままになっているが、このマイルストーンはビットコインがどの程度成長し、さらにどこまで成長しなければならないのかを示すもう一つのリマインダーとなっている。
長年開発を続けているAdam Back氏の言葉に次のようなものがある。
「また100万ビットコインを採掘した。残りは4つだ」
ビットコインの供給とデジタル貨幣の希少性についてはこちらに詳しい説明がある。
The 17 Millionth Bitcoin Is About to Be Mined: What It Means and Why It Matters