イーサリアムはブロックチェーン分割の瀬戸際にいるのかもしれない。少なくとも先週末に行われたイーサリアムの上級開発者による会合はこのような雰囲気だった。
その会議では、EIP-999と呼ばれる論争を引き起こしている提案について議論されたが、ブロックチェーン分割が今や起こりうると考えた人もいた。確かにこの提案は、所有者のミスにより失われた2億6400ドルを変換する技術的修正を試みているが、異論も多いため新しいバージョンのコードに寝返る少数のユーザーがいるかもしれない。
この提案を支持する人はバグの多いコードにより頻繁にイーサが失われると指摘し、避けられる過ちは防ぐべきだと主張している。しかしその一方で、多くの人はデプロイした後のコードを修正することはセキュリティだけでなくイーサリアムプラットフォームの完全性も損なうものだ、と警告している。
「もしこのまま実装されれば異論の多いハードフォークに至ることは、あらゆる点から考えて、議論を引き起こすには十分であることは明らかです。」イーサリアムのMistブラウザーの開発者 Alex Van de Sande氏は4月20日に開かれた開発者の会合でこのように述べた。
「イーサリアムが分裂することは避けられません」と彼は続けた。
コード変更の先頭に立つのはParity Technologies社だ。同社は、資金凍結の影響を受けたウォレットの背後で動作するイーサリアムのソフトウェアを開発している。イーサリアムの共同創設者Gavin Wood氏が2015年に立ち上げたParity社はイーサリアムのソフトウェアの中で2番目に人気があり、イーサリアムネットワークのほぼ3分の1が利用している。
Parityの2人の代表者、通信部門トップのAfri Schoedon氏と共同創設者でCEOのJutta Steiner氏は、開発者はEIP-900の実装に向かって進むよう呼びかけた。
「私にとってもっとも論理的なステップはEIP-999を実装することです。結論を出すのをあと4週間待つことでどのような利点があるのか分かりません」Schoedon氏はこのように述べている。
Steiner氏はこれに応えて、コードを実装することは分割を必要としない、と強調した。
しかしこの会合では、イーサリアム財団が開発したイーサリアムソフトウェアであるGethの開発を主導するPéter Szilágyi氏はその意見に同意せず、もしコードが利用可能になれば分割に対して議論が引き起こされるだろう、と述べた。
Szilágyi氏は次のように述べている。
「私たちが話しているのは完全に同じネットワークのことで、基本的には部族戦争の状況にあります。合意に到達できるとは思いません」
Geth 対 Parity
イーサリアムの競合する2大ソフトウェアの開発者がしのぎを削っているのを見ていると、多くの開発者が抱いている「主な心配事」が見えてくる。
一歩離れて見ると、Parity社とGethが協力する方法を理解することが重要だ。各々はイーサリアム仮想マシンで直接やり取りしている。この仮想マシンはスマートコントラクトの言語をより一般的なコードに翻訳するが、そのことをParityとGethは異なるコンピューター言語で行っている。
互いの開発に遅れずについて行くことで、どちらのソフトウェアも同調してイーサリアムとも同じブロックチェーン上にいる。
そのため、ParityとGethが同じコードを含むことが重要となる。
もし例えばあるチームがEIP-999を実装し別のチームは実装していないとすると、ブロックチェーンは2つの異なるグループ、つまり2つのイーサリアムに分裂する。
そしてソフトウェアを実装する開発者が分裂するように、イーサリアムのユーザーも分裂する。最近の投票では大多数がコード変更に反対する結果となったが、投票の方法には批判が多い。別の開発者はコミュニティの総意を推し量るのにソーシャルメディアを使うことを試みているが、これまでのところ決定的な方法ではない。
そのため、Parity社のSteiner氏は同社がこの変更を実装するかどうか「まだ決めていない」と述べている。しかし同社の担当者がCoinDeskに語ったところでは、数日中に声明を発表することになる、と述べた。
しかし分かっていることは、Parity社がなければイーサリアムはかなり失われる、ということだ。
Parity社はイーサリアムネットワークにかなりのマイニングパワーを提供しているだけでなく、イーサリアムの開発者コミュニティのかなりの部分を占めている。
このことと、Parity社がハードフォークを支持していると述べた上で、Van de Sande氏はCoinDeskに次のように語った。
「Parity社は価値の高い開発者チームで、フォークを実施して支援する強い動機を持っています」
切迫した阻害要因
しかしハードフォークを実施する動機があるにも関わらず、多くの阻害要因がある。
その一つは、Van de Sande氏がブログに投稿しているように、もしイーサリアムを分割すると取引だけでなく、数千ものトークンやブロックチェーン上に構築されたビジネスにも影響を及ぼすことだ。
分裂した後、各イーサリアムのコントラクトはどちらのブロックチェーンにも同時に存在するか、あるいはVan de Sande氏が述べたように、「珍しいことにオンラインで猫を飼っているとすると、その猫にはどれも平行宇宙に厄介な双子がいることになる」
Van de Sande氏がCoinDeskに詳しく述べたところによると、「ブロックチェーン分割のもっとも良いシナリオは、分裂後の小さい方のフォークの規模がとても小さいコミュニティで、ほとんどのアプリがどちらを選ぶべきか分かっている場合ですが、それでも敵対的なコミュニティを作り出すかもしれません」
しかし、Parity社が完全な合意がないまま先に進む期待もある、と彼は述べている。
もし分裂すると、コミュニティも2つに分裂するため、分裂後のイーサリアムブロックチェーンはどちらも価値が失われることになる。つまり、Parity社の資金凍結の結果失われる資金は価値が減ることになる。
Van de Sande氏は次のように述べている。
「ロックされたイーサは非常に多く、数百万ドルにも相当する額になります。そのことがフォークすることを押し留めるかもしれません」
それでも、数百万ドル相当のイーサがロックされており、それによりユーザーは(中には注目を集めるようなICO発行者もいる)イーサを利用できる、という問題が消えることはない。
そのため、Van de Sande氏は資金凍結で失われた額と同じ額をParity社に返金する方法を検討しているが、詳細については触れようとしなかった。
その代わり彼はCoinDeskに次のように語っている。
「問題はこれらのトークンにどうやって価値を与えるかということで、私や、願わくば他の人も、このことについて今後さらに指摘することになりそうです」
Even Ethereum’s Top Developers Think A Blockchain Split Might Be Inevitable