2018年4月10日10時から12時にかけて金融庁による「仮想通貨交換業等に関する研究会」が開催されました。
この研究会は、仮想通貨を使った資金調達を装った詐欺の横行やマネーロンダリング(資金洗浄)、仮想通貨取引所コインチェックでの通貨流失などが背景にあって発足されました。
研究会は金融庁が事務局を務め、学識者、実務家がメンバーとして構成されています。また、仮想通貨交換業の関係者等もオブザーバーとして参加しました。
金融庁による規制制度
金融庁による制度は、これまでの仮想通貨に係る動向や規制に関しての概要説明になりました。
まず、規制導入にあたって国際的な動向と日本国内での取引所破綻(取引所マウントゴックス)が挙げられます。
国際的な動向は主に二点で、2015年のG7エルマウ・サミット首脳宣言と同年の金融活動作業部会(FATF;Financial Action Task Force on Money Laundering)のガイダンスです。
以下はガイダンスにおける仮想通貨の定義になります。
- デジタルに取引可能であって、①交換手段(及び/又は)②計算単位(及び/又は)③価値貯蔵として機能する価値をデジタルに表象したもの
- 法定通貨や電子マネー(法定通貨をデジタルに表象したもの)とは区別される
また、マネーロンダリング・テロ防止への規制や仮想通貨利用者保護のための規制、仮想通貨交換業者(取引所)のに係る制度、ICO(Initial Coin Offering;資金調達)に係る制度も要約されています。
日本仮想通貨交換業協会による報告
一般社団法人日本仮想通貨交換業協会による現状報告では主に三点の仮想通貨に関係する状況が報告されました。
グローバルでの取引、国内での取引、業務実態に関しての報告です。
グローバルでの取引状況
こちらのパートでは、主要通貨の一日あたりの通貨取引量の推移、価格推移、時価総額の推移、ウォレット数そして取引に使用される法定通貨と仮想通貨の割合の説明がなされています。
上記の表は平成26年から平成30年の間における主要5通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュ、ライトコイン)の取引量の推移です。ビットコインにおいては4年で取引量が約167倍増えていることがわかります。
また、現在の仮想通貨全体の時価総額は、ビットコインが45%、イーサリアムが15%、リップルが7%、ビットコインキャッシュが4%、ライトコインが2%を占めています。
こちらは主要5通貨と取引に使用される法定通貨のシェアの割合を表したグラフです。
ビットコインの約60%が日本円で取引されているため、約6割が日本の投資家であると考えられています。また、イーサリアムは30%が米ドルによって取引されていて、リップルは25%が韓国ウォンによって取引されていることがわかります。
国内での取引状況
こちらのパートでは、各取引(現物、証拠金・信用・先物)の定義、仮想通貨取引量、年代層別顧客数分布、取引所のスプレッドの状況、仮想通貨を利用できる店舗数の説明がなされています。
2-2 仮想通貨取引量①(現物取引、証拠金・信用・先物取引)
こちらのグラフ・表では、平成26年から平成29年における主要5通貨の各取引量の推移を表しています。平成29年には証拠金・信用・先物取引の量が現物取引の量を4倍以上上回っていることがわかります。
業務実態
こちらのパートでは、セキュリティ対策、顧客への情報提供の方法が要約されています。セキュリティ対策は主に以下の三点を中心に対策が講じられるようです。
- 社内体制
- 環境整備
- 外部サービス(インターネットセキュリティ会社等)の活用
また、顧客への情報提供とは具体的に、仮想通貨取引における事前説明や取引の際に発生するリスク、手数料などが含まれています。
以上が金融庁によって設置された「仮想通貨交換業等に関する研究会」の内容となります。
取引所破綻や流失事件、ICOを装った詐欺事件などが注目される背景で、取引量が年々増大し新規参入者が増えているように仮想通貨が一般的に浸透しつつある点もあります。そのような中で国や政府の適切な規制、取引所のユーザーにとって最良な環境づくりは重要で、今回のような研究会は今後も必要不可欠である、と考えれられます。