IBMは同社の世界中の研究所で開発している「5 in 5」、つまり今後5年以内にビジネスと社会を根本的に作り変えると同社が予測する5つの技術を毎年紹介している。
今年は、ラスベガスで開かれたThink 2018の場で「科学トークでの5 in 5」が開催された。ラスベガスの5 in 5で紹介された飛躍的に進歩した技術の一つは、超小型化された暗号化アンカーだ。
IBMチューリヒ研究所で主任開発者のAndreas Kind氏が率いる「産業プラットフォームとブロックチェーン」チームは、Hyperledgerブロックチェーンプロジェクトを支援しプライバシーとクラウドセキュリティ技術を開発している。
IBMによると、この新しく開発された暗号化アンカーは今までで最小のコンピューターだとのことだ。このデバイスは塩の粒よりも小さく、数十万個のトランジスタを搭載し、製造コストは10セントで、データを監視し分析し通信し書き換えることさえもできる。IBMは今後18ヶ月以内に最初の製品が入手可能になる、と述べている。
「このデバイスはブロックチェーンの分散台帳技術と連動して、原料から消費者の手に渡るまで、商品の信頼性を保証するのに利用できます」IBM研究所所長のArvind Krishna氏はこのように述べている。「これらの技術は、食の安全、大量生産された部品の信頼性、遺伝子組み換え作物、偽物の特定、ぜいたく品の出処に取り組む新しいソリューションへの道を開くものです」
「暗号化アンカーはブロックチェーンの価値を物質領域に拡張する」とIBMでは主張している。このデバイスにはセキュリティコードが埋め込まれており、暗号学的に安全な不正防止用の署名により製品が本物であることを証明するのに使うことができる。
暗号化アンカープロジェクトは、医療器具や医薬製品用のIoTやブロックチェーンを利用したソリューションを補完する技術を開発する出発点と考えることができ、製造メーカーから消費者や患者に至るまで、拡張性のあるサプライチェーンのエンドツーエンドでのセキュリティを提供することができる。
IBMが予想している典型的な応用例は製品の不正と闘うものだ。IBMの暗号化アンカーは生産物の原産地と内容が本物であることを証明し、ブロックチェーンに保管されている記録と一致することを保証する。
同社が提供するデータによると、世界中の複数の国で多数の当事者が関わる複雑なサプライチェーンの中に紛れ込む偽造品は、世界経済に年間6000億ドル以上の損害を与えている、とのことだ。
偽造品のリスクは金融分野以外にも広がっている。例えば、ある国では特定の救命薬のほぼ70%が偽造品だ。しかし、暗号化アンカーを、例えば薬の着色に使われるほんのわずかな食用の磁気インクに混入させておくことができる。
「水を一滴垂らすと暗号化アンカーのコードが実行され利用できるようになるので、消費者は薬が本物で安全に服用できるものであることを確認できます」IBMではこのように述べている。
IBMの科学者が開発したSFのような別のデモでは、暗号化アンカーを光学センサーと併用して、人工知能アルゴリズムが迅速に物質を特定したりDNAの配列を検出したりしている。
「今後5年(以内)に微小流体、梱包装置、暗号、不揮発性メモリーの進歩と設計はこのようなシステムをすべて研究室から市場に送り出すことになるでしょう」IBMではこのように述べている。
プレゼン全体を録画した動画はこちらにある。
These Tiny “Crypto-Anchors” From IBM Could Help Fight Product Fraud