日本で三番目の規模を持つ電力会社が、前途有望なビットコイン決済技術を実験する世界初の大企業として登場した。
CoinDeskの独占取材によると、中部電力はビットコインとIoTに取り組むスタートアップ企業Nayutaと共同で実証実験に参加した。
この実験は、ライトニングネットワークを経由してビットコイン決済を行う方法を調査するものだ。ライトニングネットワークとは、ビットコインユーザーにとって手数料が安くなる可能性がある開発中のプロトコルのことだ。
15,000人の従業員と200以上の発電施設を有する中部電力は、ライトニングネットワークを使って顧客が電気自動車の充電代を払えるようにする新しい方法のプロトタイプを作ろうとしている。
試作デモの中で、中部電力とNayuta社はライトニング決済が電気自動車の充電器に送金され、支払いが完了するとすぐに充電器の電源が入り電気自動車の充電が始まる、ということまでやって見せた。
中部電力のHidehiro IchikawaマネージャはCoinDeskに対し、このテストはビットコインがどのようにIoTに対する市場のニーズを生み出す原動力となるかを調べる同社の「市場調査」の一環だが、同社は顧客からライトニング決済を受け入れる正式な予定はまったくない、と述べた。
このように中部電力のストーリーは、暗号通貨に魅せられてはいるが現在の機能に不満を持っている人の心を捉えている。注目すべきは、中部電力はだいぶ前からIoTに向けたビットコイン技術を実験してきたが、同社のブロックチェーンを利用しても宣伝されているほど低価格にはならないということに同社が気づいたことだ。
Ichikawa氏はCoinDeskに次のように語っている。
「充電そのものの電気料金は少額なので、(ライトニングネットワークでは)公のブロックチェーンの利用手数料を減らす必要があります」
Nayuta社の栗元憲一CEOは、このテストは何かもっと大きなもの、つまりライトニングネットワークを利用することでビットコインでのIoT決済を低コストで提供できる、ということに企業が関心を向けるきっかけとなるものだと考えている。
「IoTとブロックチェーンの応用にはリアルタイム決済が必要です。私たちはレイヤー2での決済が解決策となり得ることを明らかにしました」と彼は述べた。
ライトニング + 電気 = <3
しかしテストに参加したのは中部電力とNayutaだけではなかった。
ライトニングがIoTの役に立つ一つの方法を示すために、両社はライトニングネットワークのノードを電気自動車用充電器と接続し、ノードと車をつないだ。そこから日本のソフトウェアスタートアップ企業Infoteria社の協力を得て、ユーザー体験をまとめるためのモバイルアプリを作り上げた。
「送信」ボタンを押すと、このモバイルアプリはWi-FiあるいはBluetooth経由で充電器と通信し、メッセージを届けたり充電器の電源を入れたりする。
動作する様子はNayuta社が提供する以下の動画で確認できる。
https://media.coindesk.com/uploads/2018/03/Video_EV-charging-payment_Nayuta.mp4?_=1
注目すべきは実験に関わる同社は、最近ほかの向こう見ずな起業家が行ったような実際のビットコインを使ったテストはしていない、ということだ。それどころか彼らは自分たちが制御できる閉じたネットワーク上でダミーのビットコインを送金した。
詳細はさておき、テストは成功し、ライトニングは実際に電気自動車の充電に対する少額の即時決済を実行できた。
Nayuta社の広報担当森山瞳氏はさらに続けて、いつか同じ設備をすべての駐車場に設置できると考えている、と述べた。現在クレジットカードを使ってで充電できるのと同じように、ユーザはライトニング経由でのビットコイン決済を利用して簡単に充電できるようになるかもしれない。
「(ライトニングを使うことで)わずかな初期投資で非常に信頼性の高い充電管理システムを運営できるようになります」森山氏はこのように述べた。
影響と展望
今回の実験は他のブロックチェーンで起きたことに酷似している一方で、この実験は中部電力の事業規模と影響範囲、および参加企業が継続して関与していることを考えると注目に値するといえるだろう。
Ichikawa氏が強調したように、中部電力の実験は実証実験としてはまだ初期段階で、プロジェクト費用のみならず同社の商品に与える影響の詳細は不明だ。
それでもNayuta社は継続してこのプロジェクトの探求に全社を挙げて取り組む計画だ。
「弊社は開発と実験を継続し、IoT向けのライトニングネットワークに最適なアーキテクチャーを探し求めていくつもりです」森山氏はCoinDeskにこのように語った。
それに補足する形で栗元CEOは、現在もっともよく使われている3種類のライトニング対応ソフトウェアとNayuta社が開発したソフトウェアとの互換性を確保するための取り組みを行っている、と述べた。
栗元CEOは、今後ブロックチェーン技術を組み込んだ企業向けアプリケーションの開発により密接に関わっていく一環として、同社のチームをライトニング開発者向けメーリングリストに登録した、と述べた。
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