金曜日にパリで開かれたイーサリアムコミュニティカンファレンスにサプライズで登場したイーサリアム創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、Plasmaのスケーリング問題に対するソリューションを紹介した。Plasmaとは世界で2番目の規模を誇るブロックチェーンシステムであるイーサリアムの計算能力を増大させようとするスマートコントラクトシステムのことだ。
ブテリン氏とBitcoin Lightning Networkの共同創設者Joseph Poon氏が昨年考案したスケーリングソリューションは、イーサリアムの能力を強化することを目的とする開発中の技術の一つで、具体的にはメインのブロックチェーンとの相互作用が可能なスマートコントラクトのレイヤーを作ることで機能するものだ。
しかし、現在のPlasmaプロトタイプのバージョンでは、すべてのユーザーがPlasmaシステムの各スマートコントラクトをダウンロードして検証することを求めているのに対し、ブテリン氏は講演の中で一握りのデータ点だけに限定する方法を説明した。
「この方法の大きな利点は、要するにクライアントが処理する必要のあるデータ量が大幅に少なくなる、ということです」ブテリン氏はこのように説明している。
Plasmaの全履歴をダウンロードするのではなく、代わりにユーザーはコントラクトにデポジットを送信することで「Plasmaコイン」を生成することができる。従って、なんでもかんでもダウンロードして検証する代わりに、ユーザーは単にシステム上で自分が生成したトークンを追跡するだけで済む。
「今やユーザーは自分が調べたい特定のインデックス、あるいは自分が所有するコインまたは気になるコインの特定のインデックスだけを使ってPlasmaチェーンの有効性と正当性を検証すればいいのです」とブテリン氏は述べている。
ブテリン氏と開発者のDan Robinson氏、Karl Floersch氏が考案したこのアイディアはまだ検証中だ。しかしブテリン氏によるとこの計算量を最小限に抑えるシステムに対しては、暗号通貨取引所を大規模な不正侵入から守るといった、多くの重要な利用事例が考えられる、とのことだ。
ユーザー資産を直接扱わないこの構想の下での取引所は、注文控え元帳の機能を提供しPlasmaコントラクトを通じて損失を防ぐものになる。
「願わくば、無能な開発者が作った数十億ドル相当の通貨を扱う取引所が今度ハッキングされるときは、誰もお金を失うことがなければいいのですが」ブテリン氏はこのように述べている。
そして決定的に重要なのは、イーサリアムのプラットフォームが増え続けるユーザーに対応するというプレッシャーにさらされている今、今回の発見がスケーリングへの取り組みを加速する可能性がある、ということだ。
ブテリン氏はこのことを考慮して次のように述べている。
「今回紹介したのは、Plasmaをもっと拡張性のあるものにして、イーサリアムをよく利用する人向けに利用条件を広く緩和するためのシンプルな方法の一つに過ぎません」