ポルシェ本社があるドイツのツフェンハウゼンで大きな事が行われようとしている。
ポルシェの報道発表によると、この大手自動車メーカーはブロックチェーン技術を自社の車に組み入れようとしている。
伝えられるところでは、ベルリンを拠点とする技術系スタートアップ企業のXAIN社の協力の下、ポルシェは自社の車に組み込むブロックチェーンアプリケーションを開発している。車のロックや解除、駐車、そして社用車を社員に貸し出す、といったことがブロックチェーンによって簡単になる。
特に役立つことは、ブロックチェーンは本質的には公開台帳だ、という事実だ。すべての取引(この場合には車に関わる行為)は変更不可能な台帳に記録され、ドライバーの行動についてのデータが収集され、車の運用実績を追跡するのがずっと簡単になる。
理論的には、車のオーナーは自分の車にいつ誰がアクセスしたかをモニターすることが可能になる。このことは過去数年間で爆発的に増えた「シェアリング」経済が拡大する大きな要因となる可能性がある。
さらに、このことは車のオーナー間でP2Pのやり取りの可能性を拓くものだ。夜の街に繰り出すとき、クレジットカードを使ってガソリンを入れたり充電したりする代わりに、ドライバーは互いに「ポルシェコイン」に相当するものをやり取りして助け合えるかもしれない。
自社の車にブロックチェーンを組み込むことでポルシェは一世を風靡する「ブロックチェーンマニア」をフルに活用できる。フィルム最大手のコダック社が最近立ち上げた、社名を使ったコダックコインは、「写真家や写真館が画像の権利を管理できるようにする写真中心の暗号通貨」だ。
コダック社が自社の暗号通貨を発表した後、同社の株価は3倍に値上がりした。この記事の執筆時点では発表前の2倍の価格に落ちついている。技術が急速に進展する世界で存在意義を失っていた会社にとってこの株価は悪い数字ではない。
もう一つ興味深いのはロング・アイランド・アイス・ティー社の例だ。同社の株価は、社名をロング・ブロックチェーンに変更して同社のビジネスモデルをがらっと変える、と発表した後で2倍に上昇した。
ポルシェの今回の動きは中身を伴ったもので、投資家を引っ掛けようとするものではなさそうだが、それでも投資家を興奮させる効果があることは疑いない。ポルシェは自前の暗号通貨については発表しておらず、ほのめかすこともしていない。しかし、「暗号通貨マニア」を利用して一儲けしたいという誘惑は、このドイツの自動車メーカーにとってあまりに大きいものだ、ということが明らかになった。
本当の疑問はこうだ。このXAIN社という会社は何者で、いかにして立ち上がったばかりのポルシェのブロックチェーン部門を操ることができたのか?
詳しく調べてみると、XAIN社はブロックチェーンをテーマした2017年の「ポルシェ・イノベーション・コンテスト」に参加した100社の中で優勝している。コンテストの後、ポルシェ社内の様々な部門から集まったチームはXAIN社と共同で、車のコンピュータシステムに内蔵するアプリを開発した。
XAIN社の共同創設者、Leif-Nissen Lundbaek氏とFelix Hahmann氏は共に自動車業界でキャリアをスタートさせた。彼らは元々オックスフォード大学およびインペリアル・カレッジ・ロンドンと共同で、暗号通貨のマイニングに必要な電力量を減らすためのブロックチェーンシステムに取り組んでいた。ブロックチェーンに基づいたアプリを自動車に組み込むとどのような便利なことがあるのか、と思われるかもしれない。ポルシェのような高性能な車であればなおさらそう思われるだろう。
Porsche Begins Testing Blockchain Integration With Its Vehicles