私は、ブロックチェーン技術は10年以内に「ブロックチェーン」と呼ぶのがもはや適当ではない段階に進化する、と予測している。
このことについてちょっとだけ考えてみよう。なぜブロックチェーンと呼ばれるのか? ブロックチェーンのもっとも興味深い部分は次の3つだ。
- 合意形成の仕組み
- 管理の仕組み
- ブロックチェーンそのものの構造
最後のブロックチェーンの構造は、ブロックチェーンのネットワークがどれだけ大きくなれるか、どのくらいの時間で取引が完了するか、などに影響する。そしてブロックチェーンのこの構造こそが、「ブロックチェーン」と呼ばれる理由だ。
では「ブロックチェーン」とはどういう意味か? 2つの言葉に分けてみよう
ブロック:一連の取引をひとまとめにしたもの
チェーン:暗号学的につなげた直線状のブロック
さようなら、ブロック
私は、将来的にブロックは不要になると考える。その代わりに、取引が互いに関連し合って、以前の取引を承認することができるシステムになるだろう。
次の取引を提示するためには、キュー(取引列)にあるほかの取引を承認する必要がある。欲しいもの(提示した取引)を手に入れるためには他の取引のために仕事をする必要がある。
なぜそのようにするのか? このモデルでの取引に掛かる時間は、例えば今のbitcoinの取引時間よりも短い。マイナーは技術的な意味で無くなり、各取引が過去の取引を承認するようになる。このシステムを利用する人が増えれば取引時間は実質的に短くなる。
こんにちは、チェーン
私はまた、いずれチェーンはブロックが単一方向に並んだものではなくなると考える。メッシュ(あるいはグラフ)により近いものになるだろう。おそらくいくつか別々の方向に向かう非直線状の分岐の集合になり、多くの取引が並行して起こるようになるかもしれない。
そのため、取引グラフと呼ばれるようになるだろう。似たようなコンセプトとして(IOTAプロトコルでの)Tangleという言葉がすでにある。
今日、「クラウド」と呼ぶのとほとんど同じように「グラフ」と呼ぶようになるだろう。このグラフにあらゆる情報や取引を(知ってか知らずでか)保存するようになるだろう。
有向非巡回グラフの一つとなる
これまで見てきた私が想像する方向性にもっとも合うのは、有向非巡回グラフ(directed acyclic graph:DAG)だ。
未来の「ブロックチェーン」はこのようになるだろう
Wikipediaより:
「数学やコンピューター科学における有向非巡回グラフとは、有向サイクルがない有限有向グラフのことである」
有向非巡回グラフのモデルはブロックチェーンとは異なる働きをする。よく知られたブロックチェーンはブロックを維持するマイナーが必要となるが、有向非巡回グラフではプルーフ・オブ・ワークやブロックを必要としないだろう。
管理のための新しいモデルが必要となるだろう。そのためにしなければならないことはたくさんある。
しかしこのモデルはノードを新しく追加するときに、理論的にはブロックチェーンよりもうまく機能する。そのため、このモデルは手数料(イーサリアムの用語では「ガス(ガソリン)」)や拡張性の点で、今のブロックチェーンモデルよりも改良されたモデルと言えるかもしれない。
いずれは今のブロックチェーンができることを少しだけ上手くできるものが登場するかもしれない。このモデルにはまだ課題が残っているので、最終形態がどうなるかは分からない。しかしこの構造は私の興味をかき立てるものなので、今後の発展が楽しみだ。