仮想通貨取引で利益が出ていれば、税金を支払う必要があります。日本の国に支払う税金ですが、海外取引所を利用している場合も同じです。
今回は、仮想通貨の税金について、海外の取引所を利用しているケースを想定して解説していきます。
仮想通貨の税金とは
仮想通貨取引をしていると、売買によって利益が出たり損失が出たりします。もし1年間の取引で利益が出ている場合、所得税法の『所得』とみなされて税金が課せられます。
仮想通貨にかかる税金については、国税庁がタックスアンサーにて正式に発表しています。タックスアンサーとは、税金に関するよくある質問をまとめ、国税庁が正式な回答として公表することです。
つまり、仮想通貨の税金についてはまだきっちり法整備されていないものの、タックスアンサーという形で国が正式に『課税の対象』と認めているということです。
ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|所得税|国税庁
仮想通貨の利益は雑所得で申告
所得税法では、以下の10種類の所得が所得税の課税対象として定められています。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
仮想通貨で得た利益は『雑所得』にあたるとされ、所得税の課税対象となります。確定申告をする場合、雑所得の欄に記入して報告します。
ただし、仮想通貨取引で得た利益のすべてが雑所得にあたるわけではありません。仮想通貨を事業資産としていたり、決済で利用していたりする場合は、事業所得として計上できます。
最大55%の税金がかかることも
所得税の計算は、複数の所得を合計した額で計算される『総合課税』と、他の所得とは合算せずに別に計算される『分離課税』に分けられます。仮想通貨で得た利益は雑所得なので、総合課税として計算することになります。
総合課税は累進課税方式で、所得が増えるほど課税率が高くなる仕組みです。課税率の最高は45%なので、住民税の10%と合わせて最大55%の税金がかかります。
所得税率の一覧
所得税法で定められている所得税率は以下のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
累進課税の正式な計算方法は、所得金額を分割して段階的に税率を掛け合わせていくことです。しかし、段階的な計算をせず、所得金額の合計に税率を掛け、最後に控除額を引くという計算方法でも同じ結果になります。
海外取引所を使うと税金はどうなるのか
仮想通貨の取引所は日本だけではなく、海外にも多数存在します。特にマイナーなアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)の取引は、海外取引所でしか取引できないこともあり、日本でも頻繁に利用されています。
日本に住んでいる人の場合
まずは、日本に住んでいる人の場合をみていきましょう。『日本に住んでいる』とは、日本国籍を有している永住者のことです。
海外の取引所でも日本の税金がかかる
日本に住んでいる人は、取引所に関係なく税金がかかります。海外の取引所を利用して得た利益でも、日本で得た所得として所得税の対象となります。
ただし『日本に住んでいる人』の中でも、日本国籍を有さない外国人はこの限りではありません。一時的に日本に住んでいるだけの外国人が海外取引所で得た利益は、日本の納税の対象外です。
もちろん日本国籍を有さない非居住者であっても、日本の取引所で得た利益については納税の義務が発生します。
税務署にチェックされる可能あり
海外取引所での取引は、日本の調査が入りづらいのは間違いありません。しかし、納税額がおかしいと判断されれば『税務調査』が入る可能性があります。
税務調査は法人だけでなく、個人に対しても行われる『納税チェック』のことです。国税局や税務署から調査官が派遣され、帳簿や銀行口座の確認、さらに聴き取り調査なども行われます。
万が一税務調査が入れば、海外の取引所で得た利益もすべて知られてしまいます。脱税と判断された場合、罰金や罰則を科せられる可能性もあるので注意しておきましょう。
海外に住んでいる人は居住国へ納税
海外に住んでいる人は、その国の法律に従わなければいけません。そのため、納税も居住国に対して行う義務が発生します。たとえばアメリカでは、仮想通貨は資産とみなされ、キャピタルゲイン税が課せられることになっています。
ただし、日本国籍を有する日本永住者が一時的に海外渡航し、海外の取引所で行った取引で利益を得た場合は、日本に納税する義務が発生するので注意が必要です。
海外取引所の税金計算は複雑
海外の取引所で取引をしていると、税金の計算が少し複雑になります。重要なポイントは、為替差益が含まれることです。
利益確定のタイミングが多い
仮想通貨において所得税の対象となるのは、売買や使用によって確定した利益分です。海外取引所で取引をしていると、日本で取引するよりも利益確定のタイミングが多く、その分税金の計算が複雑になります。
他の仮想通貨との交換
海外の取引所は、日本円に未対応であることがほとんどです。その場合、仮想通貨の購入や売却を、ビットコイン建てやドル建てで行うことになります。つまり、日本円と仮想通貨のあいだに、一度別の通貨を挟む必要があるのです。
たとえば、ビットコイン建てで購入する場合、まず日本円でビットコインを購入し、そのビットコインで別の仮想通貨を購入するという方法です。
ビットコインで別の仮想通貨を購入したとき、ビットコインのトレードや売却とみなされます。つまり、そのタイミングで利益確定となり、利益が出ていれば、利益分の所得税を支払う必要があるということです。
仮想通貨の売却
反対に保有している仮想通貨を売却するときも同じで、ビットコインやドルを挟む必要があります。
ドル建てで仮想通貨を売却するときは、『為替差益』・『為替差損』が生じることになります。為替差益・為替差損とは、国の通貨間で取引をする際に、為替レートの差によって生じる損益のことを言います。
たとえば円でドルを買い、ドルの価値が上がったところで円に戻すことで利益が発生します。仮想通貨をドル建てで売却するときも同じで、ドルから円に戻すときに為替差益が発生してしまうということです。
為替差益と為替差損|商品・サービス|個人のお客さま|スルガ銀行
面倒な税金計算はツールを使ってみよう
仮想通貨の税金計算はとてもややこしく、自分ですべて計算するのは大変な労力です。そのうえ海外取引所で為替差益の計算などもあれば、なかなか自分でできることではありません。
そんなときは、仮想通貨の税金を自動計算してくれるツールを使ってみましょう。
tax@Cryptactは海外取引所も対応
仮想通貨の税金計算の際におすすめのツールは『tax@Cryptact』です。大手取引所はほぼ網羅されており、海外取引所にも対応しています。
2018年2月現在、Cryptactで対応している主な取引所は以下の通りです。
- bitbank
- bitFlyer
- binance
- BITTREX
- Coincheck
- kraken
- Poloniex
- Zaif
- BITFINEX
- CoinExchange
- cryptopia
- HitBTC
- Quoine
- GMOコイン
- changelly
binanceやBittrexなど、大手海外取引所にも対応しています。ツール自体の使い方は簡単ですが、英語に抵抗がある人は、英語表記の取引所から取引データをダウンロードする作業が大変と感じるかもしれません。
まとめ
海外取引所での取引や税金計算は、日本の取引所よりもいくらか手間がかかります。ドル建てやビットコイン建ての場合は利確のタイミングも多く、必要以上に税金がかかってしまうこともあります。
その反面、マイナーなコインを取引できたり、手数料が安かったりすることもあります。それぞれのメリット・デメリットをふまえて、海外取引所を上手に利用しましょう。